ドラッグラグのどこが悪い

ドラッグラグ(日本で新薬の承認が遅れることをカタカナ言葉で表現するとこうなる)のどこが悪いというのか?

何でもかんでもエビデンスを要求する世の中なのに、ドラッグラグが日本人の命を縮めているという証拠はどこにも見つからない。ドラッグラグが日本人の命を守っているというデータなら山ほどあるのに。それは、ドラッグラグがない合衆国と日本の医療アウトカムを比較すると、一目瞭然である。

○OECD諸国で一番drug lagがひどい日本の平均余命は世界一である
○OECD諸国で横軸に一人当たり国民医療費、縦軸に平均余命をとってプロットすると正の相関関係が成り立つが、はずれ値が二つある。右下のはずれ値、つまり、値段の高い新薬や医療機器にたっぷりお金をかけているのに平均余命が短いはずれ値が合衆国であり、ドラッグ&デバイスラグでお金をかけていないのに平均余命が長いはずれ値が日本である。
○OECD諸国で一番drug lagがひどい日本の乳児死亡率は世界一低い
○drug lagのないアメリカ合衆国の乳児死亡率は、OECD諸国の中で最低クラスである。(ハンガリーが最下位で、アメリカ合衆国はブービー賞)

もちろん,COX-2阻害薬をなかなか承認しなかった日本の規制当局も,ドラッグラグによって,何千人(何万人?)もの日本人を心臓死から守った隠れたヒーローだが,慎み深い彼らは,太平洋の向こう側のカウンターパートと異なり,決して自らの手柄を言い立てることはない.

そんなことともつゆ知らず,ドラッグラグ解消を声高に言い立てる人々は,実は規制当局にとって、極めてありがたい存在である。なぜなら、承認が遅いのはけしからん→厚労省様、頑張ってくださいね→公務員の人数を増やしてくださいね。官僚組織もどんどん肥大化してくださいね。というメッセージを送り続けているからである。

さらに有難いことには、承認した薬に何らかの問題が生じた暁には、厚労省を非難することによって、またもや厚労省様頑張ってくださいねというメッセージとともに、厚労省の肥大化を促すメッセージを送り続けるわけである。

一方、新薬や医療機器をどんどん承認して、医療にたくさんお金を使っているのに、自国民の平均余命も乳児死亡率も惨憺たる結果になっている自国の実情を知らずに必死に薬や医療機器を売り込もうとしている人々は、自分達がグローバルスタンダードの伝道者どころか、世界の田舎者として物笑いの種になっていることにさえ気づいていない。

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