読者の中には,株価や債券、外国為替といったやくざな”金融派生商品”とは無縁でいたいと思う人もたくさんいるだろう.もちろん,無縁でいられることは可能だ.
一方で,無縁でいたくても,いられないものもたくさんある.代表的なものは自分の死である.いつか必ずやってくる,この人生最大のリスクを相手に一儲けできるとしたら,こんなに面白い取引はないと思いませんか?自分の死から目を背け続け,あたかも自分が不老不死であるかのような妄想に囚われ続けていたら,大儲けの絶好の機会を逃してしまうことになりますよ.
何しろ,賭の対象は誰でも持っている自分の死です.株券も証券会社も,競馬場も必要ない.株の取引の仕方を勉強する必要もないし,競馬新聞を読む必要もない.タバコの煙で充満した場外馬券売り場に行く必要もない.
人生はギャンブルだ!?―自分の余命をブックメーカーで賭けた男(経メディカルオンライン
ブログ:竹中郁夫の「時流を読む」 2008. 6. 17)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
58歳のジョン・マシューズさんは、アスベスト吸引による悪性中皮腫と診断されました。ミドルセックスのヘアフィールド病院のドクターは2006年の4月、彼に診断を告げるとともに、「長くても25カ月は持たないだろう」と宣告しました。
昨年の10月には、「クリスマスの予定を入れない方がいい」とまでアドバイスされたマシューズさん、「それならやってみるか」とある賭けに出ました。どんな賭けかというと、まさに言葉通りの「賭け」で、ブックメーカーに行き「自分が生き延びられるかどうかの賭けをしたい」と100ポンド(約2万円)を差し出しました。(後略)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こういう変わった形でなくても,実は読者の多くはすでに自分の病気や死を材料にしてギャンブルをやっている.生命保険は立派な金融派生商品である.上記とは賭の方向性が異なるに過ぎない.つまりマシューズさんは自分が生き延びる方向に投資し,生命保険の場合には自分が死ぬ方向に投資(リスクをヘッジ)している,いわば先物買いと先物売り(空売り)の相違に過ぎず,両方とも立派なギャンブルだ.
なんだ,そんなことかと思ってはならない.何しろ自分の死である.胴元に金をむしり取られることは絶対にないし,元手が不要のギャンブルだって可能だ.そんなうまい話があるのかって?大丈夫,メディカル二条河原があなたの期待を裏切ったことがありますか?
自分の死をネタにした,元手のかからない賭け.それは教育である.あなたが人を育てれば,あなたの思いが後世に伝えられる.あなたの思いが日本中,世界中に広がっていく.「今の若い者は・・」なんて言いながら,その若い者を育てた自分自身を攻撃するストレスからも解放される.
教育をすれば,学習者からお返しが来る.そのお返しで自分も伸びていく喜びが得られる.自分を成長させてくれる学習者を愛するようになる.そうやって伸びていく自分を愛するようになる.そこには敗者は存在しない.
参考→お払い箱を夢見て