あなたは,今まで,”できる”と言われたことがあっただろうか?あったと確信できる幸運な人は,こんなところを読んでも不愉快な気分になるだけだろうから,立ち去っていただくとして,そうでないあなたには是非とも,読んでもらいたい.
そう,実は,あなたはできるんだということを私は言いたい.これは気休めでも何でもない.なぜなら,あなたはこれまで,さんざん,いろいろなことをやり過ごしてきたから.
やり過ごしたことを褒められたなんてのは初めてだと驚く必要はない.やり過ごしの価値がわかったのはごく最近だからだ.慎重なあなたは,”最新”という言葉はいつも胡散臭いと思うかもしれない.確かに,お金のかかる”最新”は,常にペテンだ.しかし,お金がかからない”最新”は,いつも本物だ.
だから,「できる社員はやり過ごす」(高橋伸夫著 日経ビジネス文庫)には,本当のことが書いてある.何しろできるあなたのことだ.目次を一瞥しただけで,瞬時に,これこそ自分が求めていた本だと理解できるに違いない.
第1章 「やり過ごし」の効能 やり過ごしてますか/やや、こんなにやり過ごしている/上司の指示は「打ちあげ花火」/有能な部下は「やり過ごす」!?/上司の「バカ殿状況」にいかに対処すべきか/「やり過ごし」上手な部下を育てる
テレビ局も,つまらん経済ドラマなんか作っている暇があったら,この本からいくらでも一流コメディの脚本が作れるだろうにと思うが,この忙しいのに,テレビ局なんかには構っていられない.そう,本書は医学教育にも応用できる.学生や研修医は,”○○の「バカ殿状況」にいかに対処すべきか”を,この本を通して学ぶことができる.
その他にも,社員(勤務医でもいい)の離職率を低くする切り札の話(第4章 「見通し」がほしい 仕事の満足はどこからくるのか),ゼロサムゲームは虚構で,Win/Winが現実であるという驚くべき発見(第5章 「未来傾斜原理」とは何か 敵同士が協力しあう不思議)等々,がてんこ盛りの本書は,たとえ税込み630円という値段を知らなくても,次の購入優先順位のトップに置きたくなること請け合いである.