Data in Context:データの文脈を読む
7500年前のイベリア女性の顔を復元、現在のトルコ地方のDNAが90% ナショナルジオグラフィック 日本語版 2020/6/9
Face of a 7,500-year-old woman reveals Gibraltar's earliest humans National Geographic JUNE 4, 2020

乳糖不耐症だったことから、彼女の文化では、酪農が行われていなかったと考えられる

こういう考察を行なうためには,データ(ラクターゼの構造遺伝子であるLCT遺伝子の変異)の文脈を読む能力が要求される.この能力は,臨床医・研究者に共通する必須の資質である.AIは,「LCT遺伝子変異があるから,乳製品を回避していたのだろう」としか考えられない.そこがAIに病歴を教える難しさである.乳糖不耐症は立派な病歴である.病歴も立派な臨床データである.

内視鏡写真を何万枚も見せれば,AIは胃がんと胃潰瘍を正確に区別できる.一方,神経内科医が取った病歴をどんなにたくさん入力しても,AIはパーキンソン病と多系統萎縮症を区別することは「通常」できない.しかし,パーキンソン病と多系統萎縮症を病歴で区別する「こつ」を知っている神経内科医がいれば,AIなんかなくたって,パーキンソン病と多系統萎縮症を病歴で区別できる神経内科医なんか.いくらでも生み出すことができる.

では,なぜパーキンソン病と多系統萎縮症を病歴で区別する「こつ」を知っている神経内科医がごくわずかしかいないかというと,パーキンソン病と多系統萎縮症を病歴で区別する「こつ」知りたいと考える神経内科医がごくわずかしかいなかったし,いないし,これからもごくわずかに留まるであろうから.そしてその状況を改めようと考える人もごくわずかしかいなかったし,いないし,これからもごくわずかに留まるであろうから.そしてAIがどんなに進歩したところで,この状況は変わらない.

参考
GIGO-Big dataとやらのゴミの山をやり過ごす-
ここにもGIGO

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