脳血管障害のCT
珍しい例を集めたものではありません.むしろ典型的な例を呈示して,医学生,パラメディカルスタッフ,研修医の勉強に役立つように心がけました.
- 脳梗塞
- 前大脳動脈領域:側脳室前角近傍の低吸収域.例1(シルビウス裂近傍の中大脳動脈領域の梗塞も合併),例2
- 内頚動脈/中大脳動脈領域:
- 側頭葉の梗塞:典型的なjargon
aphasiaを呈した.
- 基底核領域の小梗塞の多発
(MRI):いわゆるlacunar infarction.
- 後頭葉の梗塞
- 小脳梗塞:その1,その2
- 脳幹梗塞:小さいもの,locked-in症候群となるほど大きいもの
- 脳出血
- 大きな被殻出血.この例はCT上で出血が7スライスにもわたっている大きなもので,死亡例である.
- 次も大きな被殻出血.これも死亡例.都市部の病院でこのような大きな出血におめにかかることは少なくなった.
- これも被殻出血だが,血腫の内部で同心円状にdenisityの異なる部分がある.臨床的には普通の被殻出血と考えた.この例は救命し,機能予後も比較的良かった.
- 視床出血:視床内に限局した例.両側視床出血(片側の出血の後,4ヶ月後に反対側にまた出血を起こした),脳室穿破水頭症を合併した大きな視床出血.
- 小脳出血:その1,その2(こちらは発症からやや時間が立っていて,造影CTでring
enhancementのある時期になっている)
- 中脳出血:背側に近い例(この例は舌の片側で味がわかりにくいという症状があった),腹側に近い例
- 橋出血
- 皮質下出血:73歳女性.急激に痴呆となったとして入院し,CTをとってみたら左前頭葉の皮質下出血だった.高齢者の皮質下出血の基礎となる病変は第一にアミロイドアンギオパチーを考える.六日後のMRI.このように血腫の内部が周辺よりも先に信号強度が落ちてくる.
- 左中大脳動脈の動脈瘤破裂によるくも膜下出血.それより上のスライス.シルビウス裂に血腫が濃いことが特徴的である.脳室が拡大し,急性の水頭症をおこしていることもわかる.
- 同じく中大脳動脈の動脈瘤破裂によるくも膜下出血.シルビウス裂の左右差に注意.出血が少ない場合には,血腫ははっきりと高吸収域に見えずに,大脳と等吸収域になる.だから,シルビウス裂が見えなくなる.突然発症の頭痛を訴える患者ではこのような所見に注意して軽微なくも膜下出血を見落としてはならない.
- 前大脳動脈の動脈瘤破裂によるくも膜下出血.このように大脳縦裂や側脳室前角に穿破して血腫が濃く分布する点が特徴的である.
- 脳底動脈先端部の動脈瘤破裂.即死に近い.
- 原因不明の脳室内出血.出血傾向などの特別な基礎疾患があるわけではない.剖検でも出血源が明らかにならないこともしばしばである.
- 慢性硬膜下血腫:大きな片側性のもの,両側性のもの(これは造影しているのでわかりやすくなっているが,isodensityで両側性のものはmidline
shiftがないと簡単に見逃すので要注意)
- 脳動静脈瘻:大きな出血を起こした30歳男性.その血管造影.別の症例(50歳男性)内頚動脈造影と,椎骨動脈造影.このようにfeeding
arteryがあちこちから来ているので,油断がならない.
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