NEJM, Lancet拾い読み-99まで

高血圧:”新薬”は何のため?
うまい話あり:カテーテルを抜かずにカテ先感染を迅速に診断する
髄膜炎菌のワクチン
BCGは無効
もう一つインフルエンザに有効な薬
カルシウム拮抗薬の総説
安静にしていてもだめ:その2
妊娠可能な女性における葉酸投与は神経管欠損の頻度を低くする
OTCの肝臓を移植
漢方薬による腎障害
なぜ人はおぼれ死ぬのか?
都市部でのレプトスピラの流行
Tissue plasminogen activatorの遺伝的多形と髄膜炎菌感染
NEJMの編集長がクビに
Rota virusワクチン2題
便潜血反応を見直す
確定診断はペプシコーラで
ECにおけるダイオキシン汚染肉騒動
無脾症における敗血症
Nipah virus
キノロン耐性のCampylobacter jejuni
cyclocporinは癌の成長を促進する
アスピリン使用制限でライ症候群が消えた
エクスタシー後のパーキンソニスム
体細胞クローンのリンパ組織発達障害
再び降圧剤の選択について
フルミナントという名の薬
ワトソン君の疑問
合衆国の中での医学論文数の地域差
筋肉マンの弱点
トップレベルの実態
ランセット編集長の誤診
定期検診の胸のレントゲンは意味がない
妊娠可能な女性における葉酸摂取の奨励
スターのスキャンダル
冷凍イチゴによるA型肝炎の流行
安静にしていてもだめ
医者と政治のかかわり
街角に出世のネタが
Dietary supplements database
万引き防止装置はペースメーカー植え込み患者には有害
亜砒酸による急性前骨髄性白血病の治療
インフルエンザに対するzanamivirの効果
火葬場職員における水銀中毒
つわりとウェルニッケ脳症
植物性の健康食品によるジギタリス中毒
ゴマを食べ過ぎると血小板が減少する?
瀕死の患者の蘇生場面における家族の立ち会い
鉄剤服用後の急性肝不全
Cisapride as last resort only
透析センターでのmicrocystinによる中毒事故
ホモシスチ(テイ)ンと動脈硬化
人間のクローニングを頭から否定すべきではない
サウナ風呂でもレジオネラ症感染の危険あり
フランスでのnvCJD例の原因


高血圧:”新薬”は何のため?
Full paperだが結論は明快だ.利尿薬やbeta-blockerなど古くて安い降圧薬を使おうが,カルシウム拮抗薬やACE阻害薬などの高くて新しい薬を使おうが,治療効果は変わらないってこと!!

では,カルシウム拮抗薬やACE阻害薬のあの売れ行きって一体何なのさ!!って言いたくなるよな.あたしゃ,自ら進んでACE阻害薬を処方するような真似は以前からしていませんよ.どこのお偉いさんが,何と言おうと,ひどい糖尿病でもない限り,降圧利尿剤からまず入りますね.それが正しいってことが証明されたわけだ.

Lennart Hansson and others. Randomised trial of old and new antihypertensive drugs in elderly patients: cardiovascular mortality and morbidity in the Swedish Trial in Old Patients with Hypertension-2 study. Lancet 1999; 354: 1751-56

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うまい話あり:カテーテルを抜かずにカテ先感染を迅速に診断する

中心静脈カテから1ml足らずの血液を採取して,グラム染色とアクリジンオレンジ染色を行い,UV光で鏡検するという,簡単な方法.

Kite P. Dobbins BM. Wilcox MH. McMahon MJ. Rapid diagnosis of central-venous-catheter-related bloodstream infection without catheter removal. Lancet. 354(9189):1504-1507, 1999 Oct 30.

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髄膜炎菌のワクチン

髄膜炎菌の流行地帯であるガーナで,流行時期に合わせて緊急にワクチン接種をするのと,流行とは関係なく,多くの人々に定期的にワクチンを接種するのと,どちらがいいか,実行可能性(資金,人手),効果といった多角的な面から検討した.その結果,流行時期に合わせて感受性の高い群にしぼって緊急にワクチンを接種する方が現実的だという結論になっている.これは,髄膜炎菌のワクチンの効果が特に小児では短期間しか持続しないこと,また,定期的に多くの人数に接種するのは,資金,人手,行政能力の面から,ガーナでは無理なこと,などが理由として挙げられている.

Christoper W Woods, Gregory Armstrong, Samuel O Sackey, et al. Emergency vaccination against epidemic meningitis in Ghana: implications for the control of meningococcal disease in West Africa. Lancet 2000; 355: 30-33.

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BCGは無効
インドでの15年間のfollow up studyでは,成人においてはBCGは無効,小児でも有効性は低いと出た.

15-year follow-up shows BCG vaccine is not effective in India. Lancet 1999;354:1617


もう一つインフルエンザに有効な薬

zanamivirと同じくインフルエンザウイルスのneuraminidaseの阻害薬oseltamivirで流行期間中,一日2回,6週間の服用で有効であるとのこと.

F. G. Hayden and others. Use of the Selective Oral Neuraminidase Inhibitor Oseltamivir to Prevent Influenza. N Engl J Med 341: 1336-1343 (1999)


カルシウム拮抗薬の総説
Calcium -Antagonist Drugs. N Engl J Med 1999;341:1447-57.

くも膜下出血には少し効くが脳梗塞には効かない.ガンのリスクを増やすと言われたことがあるが,その後の研究ではそれを裏付けるデータは出ていない,

カルシウム拮抗薬で血中濃度が上がるもの
ジギタリス,カルバマゼピン,H1ブロッカー,シサプリド,HMG-CoA還元酵素,シクロスポリン,たくろりむす,ベータブロッカー,テオフィリン,HIV protease inhibitor

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安静にしていてもだめ:その2

座骨神経痛の時,安静にしていてもだめっていう論文を以前紹介しました.今度はランセットに,ベッド上安静は意味がないばかりでなく,かえって害がある可能性があるとの論文が出ました.文献的考察なのですが,腰椎穿刺,脊椎麻酔,心カテ,腰痛,妊婦の蛋白尿と高血圧症,急性肝炎といった,ベッド上安静が当然と思われていた病態で,ベッド上安静が有効だと証明された報告はなく,中にはかえって病態が悪化するという結果が得られた報告も多いのです.

Chris Allen and others. Bed rest: a potentially harmful treatment needing more careful evaluation. Lancet 1999;354:1229.

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妊娠可能な女性における葉酸投与は神経管欠損の頻度を低くする

1991年,UKのMedical Research Council (MRC)の報告により,妊娠可能な年齢の女性に葉酸を服用させることによって神経管欠損の頻度が低くなることがわかっていた (1).しかし私は神経管欠損は白人に圧倒的に多くて有色人種に少ないと思いこんでいたので,日本人にはあまり関係ない話だと思っていた.しかしそれはとんでもない誤解だったことがわかった.日本での神経管欠損の発症頻度は,英国や合衆国とそれほど変わりないのだ (2).しかも,同じアジア系である中国では,神経管欠損の頻度が非常に高い中国北部ばかりでなく,神経管欠損の頻度が日本とほぼ同じである中国南部 でも,葉酸の効果が確認された (3).こうなると日本でも母子保健指導で葉酸摂取を奨励しなければならないのではないだろうか.

余談だが,この研究にはCDCが関わっている.日本の頭越しに中国に行っちゃうんだなと思うと,寂しいね.日本ではまともな臨床研究ができないと思われているんだ.

1. MRC Vitamin Study Research Group. Prevention of neural tube defects: results of the Medical Research Council Vitamin Study. Lancet 1991;338:131-7.

2. L. D. Botto and Others. Neural-Tube Defects. N Engl J Med 1999;341:1509-1519.

3. R. J. Berry and Others. Prevention of Neural-Tube Defects with Folic Acid in China. N Engl J Med 1999;341:1485-90.

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OTCの肝臓を移植
Death after Transplantation of a Liver from a Donor with Unrecognized Ornithine Transcarbamylase Deficiency. NEJM 1999;341:921-22.

”原因不明の脳浮腫”で亡くなった26才の男性から,肝硬変,肝癌の65才の女性に肝移植を行ったところ,高アンモニア血症で移植後6日目で亡くなった.ドナーがOrnithine Transcarbamylase Deficiencyだったのだ.時間との闘いである移植治療では,ドナーがどうして脳浮腫で死んだかなんてことを顧みている暇はないのだろう.

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漢方薬による腎障害
Lord GM and others. Nephropathy caused by Chinese herbs in the UK. Lancet 1999;354:481-2

Chinese herbal remedy linked to kidney failure. Lancet 1999;354:494

Chinese herbs nephropathyは1993年にベルギーで100人以上の被害者が出てから有名になったが,現在も被害者がわが国を含む各国で出ている.一般の薬剤性腎障害と異なることは,急速に腎機能障害が進行し,原因薬剤を中止しても腎機能障害は進行し血液透析になる.組織学的には糸球体そのものには病変は認められず,間質の広汎な線維化と尿細管の変性,萎縮,消失が見られる.原因は一部の漢方薬に含まれるaristolochic acidアリストロキア酸である.現在,保健適応薬ではチェックが行われているが,民間で売られている漢方薬による被害は今後も続く可能性がある.大切なのは,勝手に怪しげな薬を飲まないことだ.厚生省が認可した薬でさえ,とんでもないことが起こるのだから,ましていわんやである.

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なぜ人はおぼれ死ぬのか?
Michael Tipton, Clare Eglin, Mikael Gennser, et al. Immersion deaths and deterioration in swimming performance in cold water: a volunteer trial. Lancet 1999;354:626.

泳げる人間は低体温で溺死するのではない.溺死の救急蘇生法は再考の余地があるか?

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都市部でのレプトスピラの流行
これからは黄疸をともなう発熱を見たら,都市部であってもレプトスピラを鑑別診断にあげなくてはならないか・・

Albert I Ko, Mitermayer Galvao Reis, Cibele M Ribeiro Dourado, et al. Urban epidemic of severe leptospirosis in Brazil. Lancet 1999;354:820

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Tissue plasminogen activatorの遺伝的多形と髄膜炎菌感染
Tissue plasminogen activatorの遺伝的多形が髄膜炎菌感染における敗血症への進展に大きな影響を与える.Tissue plasminogen activatorの遺伝的多形は,他の感染症や循環器疾患,脳卒中とも関係はないだろうか?

Peter W M Hermans, Martin L Hibberd, Robert Booy, et al 4G/5G promoter polymorphism in the plasminogen-activator- inhibitor-1 gene and outcome of meningococcal disease. Lancet 1999;354:556.

Rudi G J Westendorp, Jouke-Jan Hottenga, P Eline Slagboom.Variation in plasminogen-activator-inhibitor-1 gene and risk of meningococcal septic shock. Lancet 1999;354:561

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NEJMの編集長がクビに
今年1月のJAMAの編集長の解任に引き続き,NEJMの編集長JP Kassirerがクビになった.原因はNEJMのブランドで一儲けを企んだ親会社の方針にKassirerが抵抗したたためである.

Richard Horton. An unwilling exit from the NEJM. Lancet 1999;354:358

Confusion as New England Journal editor is forced out. Lancet 1999;354:399

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Rota virusワクチン2題
小児において冬の下痢症の主な原因となるrota virusに対するワクチンが有望視されているが,関連の記事がランセットに2題出ていた.一つは確かに有効であるという報告 (1),もう一つは副反応として腸重積が起こる可能性があるので,FDAが接種を差し止めている (2)という報告である.

1. David I Bernstein, David A Sack, Edward Rothstein, et al. Efficacy of live, attenuated, human rotavirus vaccine 89-12 in infants: a randomised placebo-controlled trial. Lancet 1999;354:287

2. Rotavirus vaccine put on hold in USA after intussusception reports. Lancet 1999;354:309


便潜血反応
D. C. Rockey Occult Gastrointestinal Bleeding. N Engl J Med 1999;341:38-45.

便潜血反応に関するいくつかの基本的な知見を再確認しよう.

1.グアヤックテストは
1)ヘモグロビンの偽性ペルオキシダーゼ活性を利用している.一部に誤解されているごとく,経口の鉄分,鉄剤では陽性にはならない.(ただしグアヤックテストの青とタール便の緑黒色を見誤らないこと)潜血食が必要な理由は鉄分を除くのではなく,ヒト由来以外のヘモグロビンや食事由来のペルオキシダーゼ活性を除くためである.
2)ヘモグロビンは小腸でヘムとポルフィリンに分解されて偽性ペルオキシダーゼ活性を失うので,グアヤックテストは上部消化管出血の検出感度はあまり高くない.しかしより感度を高めた第二世代のグアヤックテストはOK.

2.ヒトヘモグロビンの免疫化学的反応は
1)ヘモグロビンはペプシンや膵消化酵素でヘムとグロビンに分解されて抗原性を失うので上部消化管出血の検出には役立たない.もっぱら下部消化管出血の検出に有効である.

以上より.グアヤックとヒトヘモグロビン免疫化学的反応を組み合わせて消化管出血の部位を判定する.

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確定診断はペプシコーラで
あなたの外来に72才の男性が来た.主訴は失神発作である.とくに冷たい炭酸飲料を飲むとくらくらして気を失ってしまうとのことである.一般身体所見,神経学的所見に異常はない.頚動脈洞マッサージをしても失神発作は誘発されない.

あと,あなたはどんな検査をするか?頚動脈ドプラー,tilt table test,ホルター?全部問題ないよ.MRI? CT?一体どんな病変を予想して脳の画像をとるの?そりゃ72才だから小梗塞の2つや3つはあるだろうよ.でもそれで失神発作を説明できるの?脳波はちょいと遅かったけど,フェニトイン投与でも失神発作は押さえられず.

そんなに大層な検査をいくつもやる必要はないんだ.冷えたペプシコーラ(まあ,コカコーラでもいいんだが)を一缶買ってきて,目の前で飲んでもらって発作が誘発されればそれで診断確定.

Deglutition syncope ws a dysautonomic syndrome associated with intense vagal afferent activation due to esophageal stimulation. It evokes sympathetic inhibition with vagal efferent activation, causing bradycardia, peripheral vasodilation, and hypotension. Cold beverages frequently trigger delutition syncope. The problem can be treated with avoidance of the stimulus.

Olshansky B. A Pepsi Challenge. N Engl J Med 1999;340:2006.

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ECにおけるダイオキシン汚染肉騒動

99/5/27に始まったベルギー産鳥肉豚肉のダイオキシン汚染騒動は当局が汚染の事実を知りながら6週間も隠していたこともあって,狂牛病騒動にも劣らない大きな政治問題に発展した (1).しかし,本当にダイオキシンが癌を起こすかどうかは未だに明かではない (2).

1. European dioxin-contaminated food crisis grows and grows. Lancet 1999;353:2047.

2. Public-health message about dioxin remains unclear. Lancet 1999;353:1681.

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無脾症における敗血症
無脾症における敗血症の原因菌としては,肺炎球菌,髄膜炎菌,インフルエンザ菌が有名であるがグラム陰性菌としてはどんなものがあるだろうか?特に犬に咬まれたという病歴のある場合.

また,この論文を読むと,無脾症における予防接種は,最低,肺炎球菌,髄膜炎菌,インフルエンザ菌のワクチン接種を考えなくてはならないことがわかるが,わが国の現状はどうだろうか.とくに髄膜炎菌,インフルエンザ菌のワクチン接種などは全く考えられていない状態には,行政ばかりではなく,医師一人一人にも責任がある.

J. Parsonnet and J. Versalovic. Weekly Clinicopathological Exercises: Case 17-1999: A 42-Year-Old Asplenic Man with Gram-Negative Sepsis. N Engl J Med 1999;340:1819-26

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Nipah virus
1998年10月以来、マレーシアのNegri Sembilan, Perak,および Selangor州において発生していたウイルス性脳炎は流行が発生してから、合計258例の患者と100例の死亡が確認された。一時日本脳炎かと大騒ぎになったが (1),新種のHendra-like virusであるニパウイルス(Nipah virus)が主犯であることが判明し,流行も終息したと宣言された.詳しく調査された71例のなかで20例の患者と8例の死亡者については日本脳炎のみが原因であり、28例では日本脳炎とニパウイルスの混合感染であり、そのうちの17例が死亡した。ニパウイルス単独では139例の患者とそのうちの49例の死亡が確認されている。ニパウイルスは豚との直接かつ濃厚な接触によって感染するが,蚊を媒介しての感染や人から人への感染は起こらない.詳細は感染症情報センターを参照
1. Watts J. Malaysia - Japanese encephalitis outbreak leads to military intervention. Lancet. 353(9158):1075, 1999 Mar 27.
キノロン耐性のCampylobacter jejuni

ミネソタというと卵売りですが,卵を売れば鳥肉も売る.その鳥にシプロフロキサシンを含めたキノロン系の抗生物質がばんばん使われている.そのためにキノロン耐性のキャンピロバクターが出てきたというお話です.Vancomycin-resisitant Enterococcusだけではないのです.食用動物にはとにかく人間様顔負けにいろんな抗生物質が使われているのです.

K. E. Smith and Others.Quinolone-Resistant Campylobacter jejuni Infections in Minnesota, 1992-1998. N Engl J Med 1999;340:1525-32.

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cyclosporinは癌の成長を促進する
Natureの論文なのですが,臨床的にも重要だとおもったので紹介します.in vitroばかりでなく,in vivoでもマウスの腺癌の転移を促進する作用があります.その作用にはtransforming growth factor betaが関与しています.

Hojo M, Morimoto T, Maluccio M, et al. Cyclosporine induces cancer progression by a cell-autonomous mechanism. Nature 1999;397:530-534.

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アスピリン使用制限でライ症候群が消えた
CDCからの論文.そう,消えたんだ.嘘じゃない.1980年には合衆国で555例あったのが,アスピリンとの関連が示唆されてから,その数は激減の一途をたどり,94年以降は絶滅に近い状態となっている.公衆衛生,疫学の重要性,正しい学問的知見を世間一般に広げることが如何に重要かをこの論文は物語っている.

著者らは,今後ライ症候群とおぼしき例に遭遇したら,ライ症候群そのものではなくて,類似の代謝異常症を疑って検索すべきだと言い切っている.合衆国でライ症候群と診断することは,誤診か医療過誤のどちらかだと自ら宣言することになる.

ひるがえって,わが国では,アスピリンとライ症候群の関係の密接さがどんな科の医師にも,また親にも,あまねく知られているとはとても言えない.これは血友病患者のHIV以上の悲劇を現在も引き起こしているのではないだろうか?

”小児用バファリン”これは日本でだけ使われている薬なのか?脳梗塞の大人に使われるだけならいいのだが,読んで字のごとく,素直に子供にも使われているだろう.保険点数も子供でないと通らないことだし.

E. D. Belay and Others. Reye's Syndrome in the United States from 1981 through 1997. N Engl J Med 1999;340:1377-82.

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エクスタシー後のパーキンソニスム
Parkinsonism after Taking Ecstasy. N Engl J Med 1999;340:1443.
が,そう訳されているんです.

何とかならんのかね.この訳は.日本語を読めば,誰だって,気持ちいいことをした後,パーキンソニスムになったと思うじゃないか.大丈夫ですよ.そんなことはありませんから,安心して励んで下さい.(事情がよくわからない人のために解説しておくと,ecstasyとは,3,4-methylenedioxy-methanphetamine (MDMA)のことである)

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体細胞クローンのリンパ組織発達障害
日本でも体細胞クローンの牛の死亡率が高いことが問題になった.また体細胞クローンではないが,embryo splitting(受精卵分割)で作られた牛が日本で市場に出回っていることが騒ぎになった (1).

今回の報告 (2) では体細胞クローンの牛が生後7週で急激な貧血とリンパ球減少を起こし,51日目に高度の貧血で死亡したことが報告されている.剖検では胸腺の萎縮とリンパ組織の発達障害が見られたが,その他の異常はなかったという.今回の体細胞クローニングではnuclear transferという技術が用いられており,核と細胞質の関係を含めて遺伝子のプログラミングに異常をきたしたのではないかと推測されている.急激な貧血とリンパ球減少ということだが,このような病態でどんな遺伝子がどのように障害されているのかは非常に興味があるところだ.Dollyのtelomereが短い (Nature 1999;399:316-7)ことと何か関係があるのだろうか.

1. Watts J. Japanese outcry at the sale of beef from 'cloned cows'. Lancet 1999;353:1422

2. Renard J-P and others. Lymphoid hypoplasia and somatic cloning. Lancet 1999;353:1489-91.


再び降圧剤の選択について
Choosing antihypertiesivesと題してLancet 1999;353, 1503に掲載されていた文章である.私がなぜ新しい降圧剤を目の仇にするのか,わかってもらえると思う.結局,薬屋が高いか低いか心配するのは,薬の値段であって,血圧ではないのだ.

Drug companies have stopped advertising beta-blockers and diuretics and have switched their marketing campaigns almost entirely to calcium channel blockers, according to a reprot in Circulation (1999;99:2055-7). Moreover, the campaigns have worked. Calcium-channel blockers now account for 38% of US prescriptions for antihypertensives against only 19% for beta-blockers and diuretics. But, say the authors, current evidence indicates that the older types of antihypertensives are usually more effective than newer ones.

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フルミナントという名の薬
”テルビナフィンとフルミナントによる肝不全”と訳されてNEJM日本語目次に掲載されておりました.

Terbinafine and Fulminant Hepatic Failure. N Engl J Med 1999;340:1292.

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ワトソン君の疑問
”シャーロック,大変だ.血清カリウム値が12なんだ!!”
”また新しい研究かい,ワトソン君,死体から血清を取ってカリウムを測ろうなんて”
”そうじゃないさ,シャーロック,生きている人間だからあわててるんだ”
”生きている人間の血清カリウムが12っていうことは,何もあわてることはない.それは嘘の値だからさ.問題は誰が何のために嘘をついたかだ.”

さあてその種明かしは?

Extreme Hyperkalemia in Munchausen-by-Proxy Syndrome. N Engl J Med 1999;340:1293-94.

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合衆国の中での医学論文数の地域差
人口当たりの医学論文の数は北東部で高く,北西部,中西部で低い.カリフォルニアは中程度というのが意外でしたね.フロリダが最下位グループに入っているのはやはり,あんな土地柄では実験室に閉じこもって研究しているのが馬鹿らしくなるからでしょうか?そんなことを思いながら州別に色分けされた地図を見ていると興味は尽きません.

Geography of U.S. Biomedical Publications, 1990 to 1997.N Engl J Med 1999;340:817-8.

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筋肉マンの弱点
ムキムキの筋肉マンがおなか痛いよーって泣いて救急外来に来たとしたら,あなた,何を考えますか?

Large Hepatic Hematoma and Intraabdominal Hemorrhage Associated with Abuse of Anabolic Steroids. N Engl J Med 1999;340:1123-24.

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トップレベルの実態
学生時代,外科の教授が,日本の胃癌の診療は世界でトップレベルだと言っていたが,そのトップレベルの国で行われている二次リンパ節廓清に疑問符がついた.胃癌患者で,日本が標準術式としているD2リンパ節廓清は,入院期間を長くするだけで,5年生存率,5年再発の累積リスクはD1廓清と変わらないということだ.この論文の著者の一人は国立ガンセンター外科医長の笹子三津留である.

そもそも,胃癌におけるリンパ節廓清をどこまで行うかという基本的な問題に関して,科学的根拠を示した論文が日本から出ていない(すくなくとも下記の論文で引用文献が全くない)というのはどういうこっちゃ.これが世界でトップレベルだというんだから恐れ入ります.日本の外科医からの反論を望む.

J.J. Bonenkamp and others for the Dutch Gastric Cancer Group. Extended lymph-node dissection for gastric cancer. N Engl J Med 1999;340:908-914.

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ランセット編集長の誤診
Horton R. The uses of error. Lancet 1999;353:422-3.

ランセットの編集長,Richard Hortonによる”誤診”の告白です.一気に読んでしまうこと請け合いです.是非ご一読を.

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定期検診の胸のレントゲンは意味がない
Mangura BT Reichman LB. Periodic chest radiography: unnecessary, expensive, but still pervasive. Lancet 1999;353:319-320.

肺ガンのスクリーニングに胸のレントゲン写真による定期検診が役立たないことはご存知の通り.しかし,結核のスクリーニングはおろか,患者のフォローアップにも定期的な胸のレントゲンは役立たないことをご存知でしたか.これは冗談でも何でもありません.これこの通り,ランセットに堂々と書いてある.誰か,余計な被爆はやめるべきだという趣旨で訴訟でも起こしてくれないかな.唯一の被爆国でこのような訴訟が起きてこそ,日本の評価が高まるというものだ.

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妊娠可能な女性における葉酸摂取の奨励
RL Bekkers and TKAB Eskes Periconceptional folic acid intake in Nijmengen, Netherlands. Lancet 1999;353:292.

神経管欠損の頻度が多い白人では,妊娠可能な女性に対して葉酸摂取が奨励されているが,日本でははっきりした基準がない.黄色人種には神経管欠損が少ないから問題ないと済ましていていいものだろうか?→参考コメント(在英の日本人向けに書いたものです)

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本当に必要な降圧剤は?
降圧剤が何種類もある愚については既に述べた.その数ある降圧剤の中でもangiotensin-conerting enzyme (ACE) inhibitorはカルシウム拮抗薬と並んで世界中で最も売れている薬の一つである.ACE inhibitorの家元のカプトプリルは,発売以来15年たち,WHOのessential drugsのお墨付きももらっている.押しも押されぬ大立者である.

カルシウム拮抗薬が癌のリスクを増すという衝撃的な報告 (1) でけちがついたのを尻目に,(実はけちがついてもよく売れているが,それは薬屋からお金をもらっている研究者が,カルシウム拮抗薬に有利な研究結果を出すからだ.休憩小話の冗談じゃないさ,天下のNEJM (2)にそう書いてある.)ACE inhibitorは順調に売れている.しかし,その売れっ子の化けの皮をも剥がそうという報告が現れた (3).もてはやされているACE inhibitorを使おうと,古ぼけた利尿剤やβブロッカーを使おうと,循環器系の病気の確率は変わらないっていうんだ.高いお金を出してACE inhibitorで血圧を下げようと,安い昔風の降圧利尿剤を使おうと,結果は同じってわけだ.今や世界中で売れているACE inhibitorの額って言ったら,日本の”脳代謝賦活剤”の比じゃないぜ.もし,ACE inhibitorが全部降圧利尿剤に置き換わったら潰れる会社がいくらでも出てくる.

”新薬”とか”医学の進歩”というものが如何に当てにならないか,新しい治療法の評価に如何に長い時間がかかるかということが,この論文だけでもわかっていただけると思う.

1. Pahor M, Guralnik JM, Ferrucci L, et al. Calcium-channel blockade and incidence of cancer in aged populations. Lancet 1996;348:493-7.

2. Stelfox HT, Chua G, O'Rourke K, Detsky AS. Conflict of interest in the debate over calcium-channel antagonists. N Engl J Med 1998;338:101-6.

3. Captopril Prevention project study group. Effect of angiotensin-conerting enzyme inhibition compared with conventional therapy on cardiovascular morbidity and mortality in hypertension: the Captopril Prevention Project (CAPPP) randomised trial. Lancet 1999;353:611-16.

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冷凍イチゴによるA型肝炎の流行
A型肝炎の流行の原因食品として,これまで貝,レタス,冷凍のラズベリー,冷凍のイチゴが報告されている.冷凍の果物というと,汚染食品として奇異な印象を受けるかも知れないが,バクテリアと違って敵はウイルスだから,冷凍でも生き延びて食品の中に潜んでいる可能性が十分あるのだ.またA型肝炎ウイルスは自然感染のチャンスの多い開発途上国よりも先進国の方で抗体保持者が少ないから,先進国だからとてリスクが低いわけではない.ちなみに下記の論文はミシガン州とメイン州での流行である.

Y. J. F. Hutin and Others. A Multistate, Foodborne Outbreak of Hepatitis A. N Engl J Med 1999;340:595-602

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安静にしていてはだめ
”安静にしていなさい”というのは大抵の病気で医者が言うおきまりの文句だ.とくに腰痛,坐骨神経痛の場合にはベッド上安静が金科玉条のように言われている.しかし実際にそうかどうかは誰も証明していない.そういう”証明されていない常識”に真正面から取り組むと,N Engl J Medの論文になる.(だから私は,うがい,手洗いが本当に風邪の予防に役立つのかどうか調べれば,確実にN Engl J Medの論文になるって言っている)この論文の結論は簡単だ.坐骨神経痛の際のベッド上安静は意味がない!!整形外科医にとってはコペルニクス的展開だ.

PCAJ Vroomen and others. Lack of Effectiveness of Bed Rest for Sciatica. N Engl J Med 1999;340:418-23


医者と政治のかかわり
99/1/15の金曜日,日本では成人の日だな,JAMAの編集長ジョージ・ランドバーグが,アメリカ人の性行動に関する論文をJAMAに掲載を許可したことで,クビになった (1-3).どうしてそんな論文を載せただけでクビにならなくちゃいけないかって?

その論文の内容は,アメリカの学生に対して,口と性器の接触が”セックス”と受け取れるかどうかというアンケートの結果だった.59%は,セックスではないと答えた.陰茎と膣の合体こそがセックスであるとの答えだ.そう,当たり前だ.ここまで読んだだけでクビの理由がわかった人は大したもんだ.わからない人は続けて読んでね.

さて,ここからが本題.JAMA編集部は,press releaseの中で,”この論文は最近の大統領の声明と関連してとても興味深い”とやっちまったんだ (1).つまり,大統領の行為は”不適切”であってもセックスじゃないってことなんだな.

さて,このことを休暇先のフロリダで1月12日に知ったAMAの副会長,ラトクリフ・アンダーソンがあわててAMAの理事会の了解を取り付けて,1月13日の水曜日にたまたま肘を骨折して入院していたランドバーグが電話の受話器を取れるようになった1月15日の金曜日に電話でクビを言い渡したってわけさ (1).

アンダーソンがそこまであわてたのには訳がある.まず,AMAは1997年に金儲けの目的でSunbeam Cooperationという会社と,AMAの商標を独占的に使うことを許す契約を結んだんだな.これが非難ごうごうで,結局AMAは契約を撤回,首脳陣は総辞職,損害賠償と訴訟費用で1320万ドル(1ドル120円とすると,16億円)を失う羽目に追い込まれた.この事件以来,AMAは外部の目に極端に神経質になっていた.この事件のあと,空軍軍医総監からAMAに迎えられたのがアンダーソンというわけだ (1).

AMAの政治的立場も今回の事件と大いに関係がある.AMAは共和党シンパだからだ (1).たかが学生へのセックスのアンケート調査のおかげで,乏しい財布の中から献金したなけなしの金を無駄にしたくなかったってわけさ.

Lancet (1)でもNEJM (3)でも編集長がeditorialで非難の声明を出しているが,その論調が対照的で面白い.LancetのHortonの方はアンダーソンとの電話の会話やこれまでの経緯を交えながら,ランドバーグの編集姿勢やアンダーソンの行動の背景をかなり詳しく述べて結論を出している.客観的に事実関係を明らかにして,自らの意見を導き出そうとという態度だ.英国人独特のシニカルな姿勢も随所に見られる.一方NEJMのKassirerは,医学ジャーナリズムは社会にどんどん関わっていかなくてはならないという信念の元に,自らがどう行動してきたか,編集者はどうあらねばならないかを手短に述べている.Hortonの文章よりも簡単でより直接的な表現に満ちている.どちらも読んでいて面白い.ふだんはeditorialなどお読みにならない方もぜひどうぞ.

1.Horton R. The sacking of JAMA. 1999;353:252-53.

2.Frankel DH and Horton R. Medicine and politics of medical journalism. Lancet 1999;353:518

3.JP Kassirer. Should Medical Journals Try to Influence Political Debates? N Engl J Med 1999;340:466-467.

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街角に出世のネタが
教授と合わなくて大学を離れてしまい,立身出世の道がなくなったと悶々としている皆さんに耳寄りなニュースです.あなたもNEJMに論文が書けます.やつらを見返してやるチャンスです.

Brouqui P and others. Chronic Bartonella quintana Bacteremia in Homeless Patients. N Engl J Med 1999;340:184-9

著者らは71例(たったの71です.新宿や上野をお散歩すれば一日でリクルートできる数!!)のホームレス患者の血液培養,抗体価測定,そしてキモノジラミ採取をしてPCRにかけた(これなら往診で検体を採取できる!!)だけで,Bartonella quintata感染症の臨床研究としてNEJMのフルペーパーに仕立て上げてしまったのです.さあ,書を捨てて町に出よう.

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Dietary supplements database
NIHがDietary supplements databaseをインターネット上で無料で公開している.

http://dietary-supplements.info.nih.gov

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万引き防止装置はペースメーカー植え込み患者には有害

Santucci PA and others. Brief Report: Interference with an Implantable Defibrillator by an Electronic Antitheft-Surveillance Device. N Engl J Med 1998;339:1371-4.

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亜砒酸による急性前骨髄性白血病の治療
Soignet SL and others. Complete Remission after Treatment of Acute Promyelocytic Leukemia with Arsenic Trioxide. N Engl J Med 1998;339:1341-8.

何かとおさわがせの砒素ですが,急性前骨髄球性白血病によく効くということをご存知でしたか?all-trans-retinoic acidと同じく,またまた中国からの報告が元になっているんです.これがまた,化学療法後に再燃した患者12人に使って11人を完全寛解に持ち込んだと言う驚異的な効果です.使った亜砒酸の量も少なくて,副作用も軽度だったとのこと.どうして効くかというと,caspase 1とcaspase 3を活性化してアポトーシスを誘導するからだっていうんですね.all-trans-retinoic acidの分化誘導とは作用機序が違うから,all-trans-retinoic acid抵抗性の急性前骨髄球性白血病やall-trans-retinoic acidに一旦感受性になって寛解に持ち込んだ後再燃したような例でも砒素が効くんだそうです.

中国っていうのはいろいろ新規な使い方を開発してくれますね.これは漢方薬の有効成分を分析していく過程で得られた結果でしょう.漢方薬にはもともと砒素が含まれているものがあるのです.しかし,中国では治験計画とかインフォームドコンセントとか,どうしているのかね.日本の製薬会社も英国で治験したりしないで,中国でやったらどう?(^^;)

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インフルエンザに対するzanamivirの効果
zanamivirはインフルエンザウイルスA,Bのneuraminidaseの特異的阻害剤で,インフルエンザウイルス感染症の治療薬として期待されている.今回の研究では発症早期(30時間以内)にzanamivirの吸入を行えば,病悩期間を短縮し,合併症の頻度も低くできることがわかった.しかし,発症30時間以内に投与開始という条件が現実的かどうかが問題である.

The MIST study group. Randomised trial of efficacy and safety of inhaled zanamivir in treatment of influenza A and B virus infections. Lancet 1998;352:1877-1881

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火葬場職員における水銀中毒
Maloney SR and others. Mercury in the hair of crematoria workers. Lancet 1998;352:1602

人間の最終処分場の職員は人間から出る毒の汚染を受ける.ご遺体の歯にアマルガムの詰め物がしてあれば火葬場の職員は当然水銀の汚染を受ける.

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つわりとウェルニッケ脳症
Tesfaye S and others. Pregnant, vomiting, and going blind. Lancet 1998;352:1594.
心ある内科医は,妊娠悪阻の恐ろしい合併症としてウェルニッケ脳症は是非とも覚えておかなくてはならない.そして,心ある内科医はつわりの激しい妊婦には例外なくthiamineの注射をするように,産科医を啓蒙しなくてはならない.

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植物性の健康食品によるジギタリス中毒 (98/11)
Slifman NR and others. Contamination of Botanical Dietary Supplements by Digitalis lanata. N Engl J Med 1998;339:806-811.
日本で言うところの”植物性の健康食品”の中に含まれていたジギタリスによる中毒.それまで健康だった人(もちろん心臓病の既往もない)が,いきなり嘔気,嘔吐,房室ブロックといったジギタリス中毒で救急外来に受診してくるのだ.恐ろしい世の中である.もし漢方薬も併用していて低カリウム血症が基礎にあったりしたら,心室細動や心肺停止で来院なさるかもしれない.

NEJMの同じissueには同じように,herbal medicineの重金属汚染 (1)(砒素,水銀,鉛→カレーばかりが毒じゃない),”健康食品”に含まれるbutyrolactoneによる中枢神経抑制 (2) の報告が載っている.まったく油断できない世の中になったもんです.

1. Ko RJ. Adulterants in Asian Patent Medicines. N Engl J Med 1998;339:847.

2. LoVecchio F and others. Butyrolactone-Induced Central Nervous System Depression after Ingestion of RenewTrient, a "Dietary Supplement". N Engl J Med 1998;339:847.

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ゴマを食べ過ぎると血小板が減少する?
28歳の女性の女性の変動する血小板数の原因が,好物のゴマだったというお話.

Arnold J and others. Case report. A young woman with petechiae. Lancet 1998:352;

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瀕死の患者の蘇生場面における家族の立ち会い
蘇生に立ち会うことで心理学的に悪い影響は見られない.蘇生場面に家族に立ち会ってもらうことに,医療チームは自信を持ってよい.

Robinson SM and others. Psychological effect of witnessed resuscitation on bereaved relatives. Lancet 1998;352:614-617

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鉄剤服用後の急性肝不全
無症状のヘモクロマトーシス(1)が鉄剤服用で急性肝不全(2)になることがある.急性の肝障害の鑑別診断としてヘモクロマトーシスも考えておくべきだろう.

1. Edwards CQ, Kushner JP. Screening for hemochromatosis. N Engl J Med 1993;328:1616-20.

2. Hemochromatosis Presenting as Acute Liver Failure after Iron Supplementation. N Engl J Med 1998;339:269-270.

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Cisapride as last resort only
Ault A. US FDA warns doctors to use cisapride as last resort only. Lancet 352:120,1998.

FDAによれば,合衆国では93年より,シサプリド(日本での商品名はアセナリン,リサモール)に関連したと思われる死亡が38例に達している.以前よりアズール系抗真菌剤との併用は禁忌とされていたが,日本でも最近,併用禁忌薬剤としてエリスロマイシン,クラリスロマイシン,インジナビル,リトナビル,ネルフィナビルが加わったが,FDAはシサプリドを極力使わないように警告を発している.私は,これしきの薬を”last resort”として使わなければならない状態はほとんどないと考える.だから使わないでいいと思う.

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透析センターでのmicrocystinによる中毒事故
塩素消毒を行わなかったためにcyanobacteria (i.e. blue-green algae池田注;藻類なのかな?)により汚染された水が透析患者に使われた.その水は産生されるcyanobacteriaが産生するmicrocystinというcyclic peptideを含み,これが急性肝不全を起こすのだそうな.ブラジルからの報告

Liver Failure and Death after Exposure to Microcystins at a Hemodialysis Center in Brazil. N Engl J Med 1998;338:873-8.

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ホモシスチ(テイ)ンと動脈硬化
今まで私は先天的な代謝異常としてホモシスチン尿症しか頭になかったのですが,どうもそれだけではないようです.

Reduction of Plasma Homocyst(e)ine Levels by Breakfast Cereal Fortified with Folic Acid in Patients with Coronary Heart Disease. N Engl J Med 1998;338:1009-1015.

Mechanisms of Disease: Homocysteine and Atherothrombosis. N Engl J Med 1998;338:1042-1050.

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人間のクローニングを頭から否定すべきではない
Cooling down over cloning. Lancet1998;351:151.ランセットのeditorial.人間を丸ごとクローニングするのではなく,人間の臓器を持った動物をクローニングすれば移植臓器の不足を解消し,より人間に近い条件で動物実験ができるだろうとしている.

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サウナ風呂でもレジオネラ症感染の危険あり
Legionnaire's disease and saunas. Lancet1998;351:114. レジオネラ症は無症状から重篤な肺炎まで重症度が様々である.サウナに入って湯冷めで風邪をひいたなんてのも,もしかしたらレジオネラ症なのかもしれない.
フランスでのnew variant CJDの原因は牛肉ではなく牛の成長ホルモンだった
New variant Creutzfeldt-Jakob disease and bovine pituitary growth hormone. Lancet1998;351:112-113.
new variant CJDで,英国人以外ではただ一人の症例のフランス人は実はボディビルディングに凝っていて,筋肉増強剤として牛の成長ホルモンを使っていた.

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顕微鏡要らずのマラリア診断
Non -microscopic methods for diagnosis of malaria. Lancet 1998;351:80-81.
気分はシャーロックホームズ
とにかくこの写真を見て病気を当ててみなよ.答えは見てのお楽しみ.Medical Mystery -- The Answer Revealed. N Engl J Med 1997;338:266-267.

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小血管炎の総説
Jennete JC and Falk RJ. Medical Progress: Small-Vessel Vasculitis. N Engl J Med 1997;337:1512-1523.

血管炎と聞くと,アレルギー・膠原病に興味を持っている内科医以外は苦手と感じる人が多いのではないだろうか.私もその一人である.microscopic PN, ウェジナー,Good-Pasture, Churg-Strauss etc.一体どこがどう違うんだろうって,いつも思う.この総説はそういう素朴な疑問に答えて,とてもわかりやすく解説されている.専門分野にかかわらず,すべての内科医にお勧めする総説である.

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HIV needlestickによる感染成立のリスクファクター
A Case-Control Study of HIV Seroconversion in Health Care Workers after Percutaneous Exposure. N Engl J Med 1997;337:1485-90.

HIV患者血液の針刺し事故後のHIV感染率は0.3%と言われているが,一体どういう針刺し事故がリスクが高いのか,たとえば,傷の深さ,針への血液の付き加減,処置した患者のHIVの病期などがどのように針刺し後の感染の成立のリスクと関わるのか,針刺し事故後のzidovudineの投与は効果があるのか,など,素朴な疑問に答えるためにこの研究は行われた.結果は,傷が深くて,針が肉眼ではっきりわかるほど血にまみれていて,かつ処置した患者が末期に近ければ感染のリスクが高まるとわかった.zidovudine投与の効果は弱いながらも認められた.→GO TOP


胃透視のバリウムの中に含まれていたcarboxymethylcelluloseのアナフィラキシー
N Muroi and others. Anaphylaxis from the Carboxymethylcellulose Component of Barium Sulfate Suspension. N Engl J Med 1997;337:1275-1277.

carboxymethylcelluloseは医薬品ばかりでなく,食品や化粧品の添加物としてもひろく使われている.セルロースだから消化管から吸収されないとされているが,胃透視の造影剤の成分として含まれていたcarboxymethylcelluloseのアナフィラキシーの報告例がNEJMに載った.症例はアレルギー歴のない63才女性で,過去の消化管造影では問題なく検査を受けていた.胃透視の30分後に発疹,血圧低下,意識消失を起こした.皮内反応と白血球からのヒスタミン遊離でcarboxymethylcelluloseのアナフィラキシーが証明された.

1例の症例報告だが,このような報告の価値を認めて掲載するNEJMのeditorial handlingを賞賛したい.そしてこの症例報告書いた岡山大学薬理学教室のスタッフも賞賛したい.

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飲み食いを伴う製薬会社の宣伝活動への警告
Sharfstein J. Pfizer Night at Boston Billiards. N Engl J Med 1997;337:134
米国医師会が,製薬会社の宣伝活動に参加する医師に対して明確なガイドラインを示していることがわかる.また製薬会社の側にも自主規制がある.規制緩和の世の中だが,こういう規制はどんどん進めて行くべきだろう.医者の治療方針が懇親会の料理の内容で左右されるなんてことがないようすべきだ.そんなことはありえないと笑う人がほとんどだろうから,薬の説明会の後の懇親会もお車代も,もう金輪際いらないですよね?→再びサルの教育について
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大腸ファイバースコープによるC型肝炎の伝播
Patient-to-Patient Transmission of Hepatitis C Virus during Colonoscopy. N Engl J Med 1997;337:237-240.
一人のHCVの感染者から大腸ファイバーで二人に感染させてしまっている.感染はHCVの塩基配列によって確定している.明かな院内感染,医療事故なのだが,こういう例もきちんと報告して他山の石を積み上げていこうとするのが科学者の態度だろう.→GO TOP
胃瘻,胃管は嚥下性肺炎の予防にはならない
Use of tube feeding to prevent aspiration pneumonia. Finucne TE, Bynum JPW. Lancet 1996;348:1421-23
結局,口腔内の唾液を誤嚥したり,胃から食道への逆流で,嚥下性肺炎が起こってしまうので,せっかく胃瘻を作っても無駄だということらしい.われわれ神経内科医は特に筋萎縮性側索硬化症の患者さんで胃瘻を考慮することが多い.これは嚥下性肺炎の予防もさることながら,とにかく飲み込めないので栄養確保のルートということで胃瘻を作るのだが,この場合にも肺炎のリスクは決して低くなるわけではないということを心に留めておかなくてはならないわけだ.→GO TOP
ステロイドの吸入は白内障のリスクになる
Robert GC and others. Use of Inhaled Corticosteroids and the Risk of Cataracts. N Engl J Med 1997;337:8-14→GO TOP
高圧電線下での生活は小児のリンパ芽球性白血病のリスクにはならない
Linet, M. S. and others. Residential Exposure to Magnetic Fields and Acute Lymphoblastic Leukemia in Children. N Engl J Med 1997;337:1-7.
下記も参照→GO TOP
ゴキブリアレルギーによる子供の喘息
Rosenstreich DL and others. The role of cockroach allergy and exposure to cockroach allergen in causing morbidity among inner-city children with asthma.N Engl J Med 1997;336:1350-5.

喘息の子供の中でゴキブリに対するアレルギーを示す割合は,ダニ,ネコの毛に対するアレルギーの割合よりも高い.また,ゴキブリアレルギーを持ち,高濃度のアレルゲンに暴露されている喘息の子供は,ダニ,ネコの毛に対するアレルギーを持つ子供よりも,入院,予定外の外来受診,喘鳴,学校の欠席,不眠が多い.

同じ号のeditorial(世界の疫学的な傾向も含めて書いてあり,こちらもなかなか面白いです)にダニ,ゴキブリのアレルゲンのことが書いてあります.ダニ,ゴキブリのアレルゲンの遺伝子の多くはクローニングされており,そのホモロジーから既知の蛋白であることがわかっています.例えばダニのDer1というアレルゲンは消化管で産生されるシステインプロテアーゼであり,ゴキブリのBla g2というアレルゲンはアスパラギン酸プロテアーゼだそうです.ゴキブリのアレルゲンは糞,唾液,あるいは虫体に由来すると考えられています.→GO TOP


電話2題;NEJMより
自動車の衝突事故を起こした運転手を対象にしたretrospective study.利用時間を記した料金記録を使って分析している.携帯電話使用により事故のリスクが4倍になると結論している.いわゆるハンズフリーの電話機の有効性は認められなかった.
Redelmeier DA, Tibshirani RJ. Association between cellular-telephone calls and motor vehicle collisions. N Engl J Med 1997;336:453-8.

36才の女性.電話の子機を右耳と右肩の間に挟んで32分間話しながらアイロンをかけていたところ右頚部痛が生じた.右内頚動脈解離壁内血栓により内腔は完全に閉塞していた.
Murad J-J, Girerd X, Safar M. Carotid-artery dissection after a prolonged telephone call. N Engl J Med 1997;336:516.→GO TOP


ヒトでのFas欠損:リンパ組織をはじめ,さまざまな組織でアポトーシスを起こすFas蛋白の欠損した病態の臨床例の詳しい報告が出ました.症例は3例のFas geneのmutationで.一人はホモ,二人はヘテロ.3例ともに脾臓,肝臓,腹腔内リンパ節でCD4-CD8-のdouble negative のT細胞のmassiveな増殖があった.fasの欠損は非悪性のリンパ増殖性の疾患と,自己免疫性の疾患を起こし,Fasの欠損と重症度とは関連がありました.Le Deist F, Emile JF, Rieuxlaucat F, et al. Clinical, immunological, and pathological consequences of Fas-deficient conditions. Lancet 1996;348:719-723.→GO TOP
狂馬病?:馬に常在するBorna disease virus (BDV)と精神疾患の関係を疑って馬刺をよく食べる熊本県で調査が行われました.末梢血リンパ球で,精神疾患55例中6例にBDV-RNAが陽性だったのに対し,正常対照例ではBDV-RNAは検出できなかったとのことです.両群ともに馬刺は食べていたとのこと.
Igatayi R, Yamaguchi K, Yoshiki K, et al. Borna disease virus and the consumption of raw horse meat. Nature Med 1996;2:948-949.→GO TOP
デザートにボツリヌス菌:イタリア:Simini B. Outbreak of foodborne botulism continues in Italy. 数年前日本でもはやったティラミス(tiramisu)というデザートに使われているチーズが原因だそうです.このチーズは家庭での手作りではなく,れっきとした近代的な設備の工場で作られて欧州各国や米国にも輸出もされているとのことで,回収命令が出ました.乳製品のボツリヌス汚染は極めてまれとのことで,原因を調べている最中だそうです.→GO TOP
鼻風邪に抗生剤は有効か?:鼻咽腔の細菌培養によっては風邪にも抗生剤が有効だとした論文,Kaiser L, Lew D, Hirshel B, et al. Effects of antibiotic treatment in the subset of common-cold patients who have bacteria in nasopharyngeal secretions. Lancet 1996;347:1507-10.に対する反論がLancet 1996;348:754-755に載っています.→GO TOP
電磁波では白血病にならない?:日本の電力消費と白血病による死亡率の関係は負の相関関係に近い.S Sokejima, S Kagamimori, T Tatsumura. Electric power consumption and leukaemia death rate in Japan. Lancet 1996;348:821-822→GO TOP
経鼻胃管による気胸:Thomas B, Cummin D, Falcone RE. Accidental pneumothorax from a nasogastric tube. N Engl J Med 1996:335:1325.吸引や送気による音の確認はいずれも偽陽性所見を呈することがある.→GO TOP
アセナリンによる致命的不整脈:Wysowski DK, Bacsanyi J. Cisapride and Fatal Arrhythmia. N Engl J Med 335 (4):290-291.
1993.9-1996.4の間にtorsade de pointes 34例, QT延長23例の計57例がFDAに報告されている.このうち4人が死亡し,16人が心肺停止で蘇生術が必要だった.57例中小児が7例, 思春期1例.不整脈が明らかになる前にしばしば失神発作のepisodeがある.

併用薬剤で特に問題なのはimidazole系の薬剤(ケトコナゾール,フルコナゾ ール,イトラコナゾール,メトロニダゾール)とマクロライド系の薬剤.これらの薬剤は肝臓の酵素P-450に干渉してシサプライドの代謝に影響を及ぼすと思われる.その他,不整脈に関係のある基礎疾患やリスクファクターとして,虚血性心疾患,腎機能障害,電解質異常,フェノチアジン(QT延長を起こす)の服用がある.

(コメント) この薬は喘息も悪化させるようですので(近着の厚生省副作用情報参照),類似のプリンペランに比べてひどく見劣りがしますね.だから新しい薬は大嫌いになってしまいます.

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