気分はクラーク・ケント

場所は霞ヶ関のど真ん中.書類の山に包囲され,モニターとにらめっこの最中に,電話が入る.

”もしもし,池田先生ですか?”

いかがわしい不動産屋からの勧誘でないということは,声だけでわかった.そして,用件もすぐわかった.

”○○です.お忙しいところ大変申し訳ないのだけれど,患者さんのことで相談に乗ってくれませんか”

名乗ってもらうまでもない.妙齢の女性のからの依頼は,いつもこれと決まっている.

”ええ,どうぞ”と返事をする間もなく,頭の中が臨戦体制にすぐさま切り替わって集中力が高まっていく.古くはクラーク・ケントが帽子を掛け,上着を脱いで窓から飛び出して飛んでいく場面,もう少し時代を下って,本郷猛が仮面ライダーに変身する場面.男の子なら,誰でも一度は憧れる場面だ.ホットラインの向こうですぐさま活躍場面が用意される.”患者さんは52歳の女性,半年ほど前から両側上肢の筋力低下・・・・”

こういうことがあると,霞ヶ関勤めも悪くないと思う.

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