看板に偽りはない.あなたの医療費は安くなる.ただ,4000-5000円の投資と交渉力が必要だ.薬価を調べて,効果が同じならもっと安い薬を使ってくれと,医者に要求するのである.
たとえば,胃潰瘍の治療薬を例にとってみよう.H2ブロッカーのガスターを40mgを一日1回寝る前服用(常用量)すれば,20mg1錠あたり薬価91.6だから,一日当たり183.2円で済むが,プロトンポンプインヒビターであるタケプロンを同じように一日一回30mg(これも常用量)服用すると315.8円,実に1.7倍にもなる.多くの場合,ガスターもタケプロンも効果に大差はないにもかかわらず.
この薬があなたに一番合っているから使っているのに,そんな風に値切られるのは心外だという医者がいたら,なぜガスターがふさわしくなくて,タケプロンがいいのか,理由をきちんと説明してもらおう.二つの薬を交互に使って比べてみてもしないのに,そんなことがわかるわけがないじゃないか.高い薬の方が効くような感じがするんだったら,薬も化粧品も同じ事だ.
こういう交渉が面倒臭い,お医者様に対して畏れ多いっていうんだったらそれでも結構.でも,税務署とあれほど雄々しく闘うあなたが,医者の前に出ちゃうと,どうしてそんなに意気地がなくなるの?税務署と医者だったら,税務署の方がはるかに恐いはずだろ.医者に薬価のことを尋ねるのは,医療費の還付(もうすぐ季節ですな)で丁々発止と渡り合うよりもはるかに利益効率がいい交渉なんだがね.それに本当にあなたのことを考えてくれる医者だったら,あなたの体のことばかりじゃなくて懐具合のことまで心配してくれるはずだよ.
医療費削減なんて,お役所がいくら声高に言っても,医者なんて聞く耳持たないんだ.医療費削減したって自分の懐が潤うわけじゃないからね.自分たちが巻き上げられる薬代,検査代や,給料から引かれる保険料を少しでも少なくしたいっていうハングリー精神を持った患者一人一人が必死に勉強して医者に食いついて行かないと,医療費なんか削減できっこないんだ.政治を変えていくのも同じことだよ.
薬価・点数早見表は,次のような本に出ている.注文すれば誰でも買える.問題点は,薬効分類別でなくて,商品名のアイウエオ順で並べてあることだ.”医者からもらった薬がわかる本”の類に薬価も載っていたらとても便利なのに.
薬価基準 紹介.(財)医療保険業務研究協会.ネットで買えるよ.
保険請求のための薬価・薬効早見表.株式会社サンライズ(台東区北上野2-32-8 電話03-3845-0730)発行.(1996年版は5600円)
社会保険診療報酬 薬価・点数早見表.中和印刷(中央区入船2-2-14 電話03-3552-0426)本体は3398円.