Refeeding Syndrome
飢餓状態に対するブドウ糖投与が潜在的チアミン欠乏を顕在化させる可能性について
昔飢餓・今摂食障害
わが国で最も有名なrefeeding syndromeは、秀吉が鳥取城攻略にて行った兵糧攻めにおける開城後のそれだが、戦没者230万人のうち6割が「餓死」だったとも言われる大東亜戦争でも、refeeding syndromeは目撃されている。「餓島」撤退の際に辛うじて戦闘を生き延びた将兵がrefeeding syndromeで次々と斃れていく様子が、亀井 宏「ガダルカナル戦記(四) 」に描かれている。
ただし、生還者の手記には陸軍の一部でもrefeeding症候群について経験的に知られていたことが記されている。
我々の身体は半ケ年は十分休養すべき必要があると専門家は云っていた。食事はオートミールより始め、順次常食に変えていくことである。一時に食べると死ぬと云われていた。本部の給与も身体の回復に合わせて作っていた

ウェルニッケ脳症と脚気衝心は常に一組で考える
現代に戻ると「摂食障害の救急治療と再栄養時のrefeeding症候群」には、「Wernicke脳症の予防のためにビタミンB1を必ず投与する」とあるが、特に救急外来ではWernicke脳症よりもはるかに緊急性の高い心不全・突然死予防のためにこそ、ブドウ糖とチアミンを必ず一組にして投与する必要があるそれはもちろん、(潜在的な)脚気心の顕在化→脚気衝心→突然死の連鎖を意識してのことだ。摂食障害における突然死の原因として「心不全」「不整脈」が挙げられることが多いようだが、refeeding症候群による脚気衝心=防げる突然死の可能性についての啓蒙がほとんど為されていないように思える。
Diagnosis and care of patients with anorexia nervosa in primary care settings. Ann Intern Med. 2001;134(11):1048-59.
Acute thiamine deficiency and refeeding syndrome: Similar findings but different pathogenesis. Nutrition 2014;30(7-8):948-52. doi:10.1016/j.nut.2014.02.019.

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