四半世紀目のチーフレジデント

亀井三博先生は,医者をはじめて四半世紀.押しも押されぬ呼吸器内科専門医だが,彼からの症例相談には,いつも緊張する.地域住民から信頼されて名 古屋市内で開業している彼が,なぜ1年程で全く専門外の神経内科でチーフレジデント並みの力をつけたかを説明するのに苦労は要らない.

なあに,私を自分の仕事場に呼んで,ほら,診てごらんと,自分の大切な患者さんを私に預ける度胸があったからだ.それを1年間に3回ばかりやっただ け.そう,それだけだ.→第一回目の道場の写真

あなたは,そんなことで神経疾患の診療ができるようになるのかと疑うだろうか,それとも,そこまでやらないといけないのかと思うだろうか.どちらも 当たっていない.

なぜ当たっていないかというと,私を呼んだ当初は,亀井先生は,自分自身で神経疾患の診療ができるようになりたいとは思っていなかったからだ.実は 私も,亀井先生がこれほど力をつけるとは思っていなかった.

学生さんの喜ぶ顔が見たい.彼らの生き生きしている姿が見たい.それが,私と亀井先生の共通の出発点だったし,今でも,そしてこれからも,それは変 わらない.

それで道場をやっていたら,あれよあれよと言う間に,亀井先生の力がついていった.思い当たる原因はいくつもある.

1.自分の大切な患者さんの診療だから,私の診療から知恵と技術を得ようとする気合の入り方が違う.
2.それまでの病歴を誰よりもよく知っていて,その後のフォローができるから,これまた学べることが多い.
3.今まで見えてこなかったことがわかってくると,面白くなって,もっと伸びていきたいという意欲が湧いてくる.
4.診療の幅が広がることによって,患者さんの信頼も増す.
5.もともと開業医としてプライマリケア場面で,病歴と診察を大切にする環境に恵まれている背景があるから,病歴と診察で勝負する神経疾患の診療は,実は 開業医向けである.

こんなにたくさん原因があるのに,自分のもともとの専門分野だけにこだわっていると、なかなかそれが見えてこない。しびれと聞いただけで嫌だなと 思っていたのが,問診だけで鑑別がつくとなると,自分もやってみようかなという気になる.

すると,今まで見えてこなかったものが見えてくる.それも画像検査などではなく,日常の診療の中で,患者さんの訴えを拾い上げ,その訴えの背景や原 因,対策を考察し,診療に役立てて患者さんに還元できることの手ごたえと面白さ,まさにそれが開業医の醍醐味だということがわかったら,あなたもまた,神 経内科チーフレジデントになる資格ができたというもんだ.

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